
THE BOOMのニューシングル「蒼い夕陽」にはそんな表現がしっくりきそうだ。彼らは現在、"日本"というテーマを掲げてアルバムを制作中で、その第一弾がこの曲ということになる。 彼らは初期の頃から、多彩な音楽の要素を取り入れながらも、自分たちのルーツである日本の音楽を起点として、音楽活動を展開してきた。 90年発表のアルバム『JAPANESKA』、94年発表『極東サンバ』などは、タイトルにもそうした意志が明確に表れている。 が、それでも十分ではなかったと彼らは言う。
-宮沢-
「ここ10数年、世界各地に住む日系人の方々とお会いする機会が増えてきて、日本語を話せない日系二世三世の方々が僕たちよりも美しい日本語で日本の歌を歌う場面に出会い、これまで自分たちは日本の音楽の何を勉強してきたんだろうって痛感したんですよ。サッカーの岡田ジャパンの"今こそ日本人の魂を取り戻そう"という言葉もそうですが、やっと新たな時代の幕開けになるのかなって。自分たちも音楽家として、日本人の心を持った音楽を作るべきなんじゃないかと思いました」
-山川-
「蒼い夕陽」はかつての日本の歌謡曲が持っていた哀愁とバンドならではの疾走感を同時に備えている。懐かしいのに、新鮮な曲なのだ。
「全体のムードとしては懐かしさが感じられるんだけど、今の音にしたいし、バンドのグルーヴもしっかり出したいと思いながら、作っていました」
-小林-
「古い楽器、古いアンプを持ってくれば、昔の音が出るんですけど、そうではなくて今の音を出しながら、歌謡曲的な空気も出したかったんですよ。色々と試しながら作っていくのが楽しかったです」
歌謡曲、スカ、レゲエなど、異なる音楽のミクスチャーではあるのだが、見事に融合している。まったく違和感なく、自然に聴かせるところはさすが。
-栃木-
「リズム的にはスカから始まって、エイトビートになって、展開が早いんですが、メロディは覚えやすいし、歌詞も日本的な心情が反映されている。今のTHE BOOMだから表現できたんじゃないかと思ってます。かつての日本の音楽がそうだったように、人の心の中に根を生やすような存在になれたら、うれしいですね」
タイトルの「蒼い夕陽」の青と赤が混じり合った状態はスカと歌謡曲との絶妙な融合をシンボリックに表した言葉でもあるかもしれない。これはやはり日本で生まれ育った4人が作る、唯一無二のTHE BOOMの世界だ。
-宮沢-
「もともと僕は悲しみのある音楽が好きなんです。サンバ、タンゴ、フォルクローレ、ファドなども悲しみがあるんですが、その悲しみが乾いている。一方、東アジア、日本の悲しみは湿っぽい。そのウエットなところは自分たちの特徴、テーマなんじゃないかなって」
GO!GO!7188のユウがゲスト・ボーカルとして参加していて、彼女のせつなさの漂う歌声が曲の世界観にさらに深い陰影を与えている。
-宮沢-
「曲が出来上がった時に、この曲をユウちゃんが歌ったらかっこいいだろうなと思ってお願いしました。実際にやってもらったら、僕がイメージしていたものを軽々と超えていった。デュエット、ゲスト・ボーカルはこれからもアルバムの一連の流れの中で、積極的にやっていきたいですね」
-栃木-
「今回のツアーの香川でもユウちゃんにゲストで登場してもらったんですが、そこでMIYAと一緒に「気球に乗って」を歌った時から、絶対に合うなって確信してました。ユウちゃんはロックのビートで、せつなさを歌える人なので、ベスト・チョイスだなって」